もっと早く読みたかった… 『キャッチャー・イン・ザ・ライ』

 コロナの外出自粛で外には買い物以外一切出てないから、とっても読書がはかどる。本を読んで筋トレして、たまに勉強するだけで1日が過ぎていく。でも、去年の授業期間に勉強とバイトに追われて、読みたい本を全く読めなかったときに比べればとても充実した生活を過ごせている。人生で一番今が余裕あるかもしれない。将来のことに考えを巡らせたり本を読んで知識や教養を得るのは今だからこそできることかもしれない。大げさだなって言われるかもしれないけどこの期間で人生が大きく変わることも十分あり得ると思う。

 

 今回はJ.D.サリンジャー著、村上春樹訳の『キャッチャー・イン・ザ・ライ』を読んだ。日本では「ライ麦畑でつかまえて」というタイトルの方がなじみがあると思う。文学系YouTuber のベルさんがおすすめ本として紹介していたので、興味を持った。メルカリで購入したが、実物が届くとそのデザインをみて「めっちゃおしゃれだな」と思った(笑)。インテリアとしてもいいかも。 

 

 なるべく予備知識なしで読みたかったので、ネットであらすじを調べたり評価を見たりはしないようにして読み始めた。「青春小説なんだよね」くらいの知識しかなかった。ライ麦畑という言葉の響きだけでのどかな感じの話なのかなと思っていたら全然違った(笑)。

 

【あらすじ】

 基本的にストーリーといったストーリーはない(笑)。主人公のホールデン・コールフィールドが通っている学校を退学になって寮を出て家に帰るまでを回想するという話だ。ホールデンは16歳の少年でこれまでにすでに3回ほかの学校を退学になっている。そのため親にあったら激怒されるだろうとわかっており、まっすぐ帰るわけにはいかず、少しでも親の怒りが収まったところで帰ろうと、時間稼ぎのためいろいろなところに寄り道をする。そこで会う様々な人達やものに対してホールデンの心情が読者に向けて語られている。正直ほとんどがそれらに対する文句や悪口だ(笑)。

 

【感想】

 正直読み進めるのがしんどかった(笑)。あまり海外文学、特に海外古典文学を読みなれていないのと、主人公に全く共感できず感情移入できなかったのが原因だと思う。思春期特有の周りの人たちや社会に対する文句は「え…笑」と苦笑してしまうほど理不尽なものも多く、終始ホールデンがひねくれていて子供だなと思いながら読んでいた。最後の方の妹やかつての恩師との会話のシーンではそれまでと少し違う素直なホールデンを見ることができ、すっと読めた。それでも全体を通して、読んでいる間はそんなに楽しくなく、主人公に対して苛立ちさえ覚えてしまうことがあった。

 読了後、ほかの人はどんな感想を持ったんだろうと思いネットで調べてみると、はっとさせられるコメントがあった。「この作品は読む年齢によって感じ方が変わる」というものだ。振り返ってみると僕は主人公のことを身勝手で子供だなと思いながらこの本を読んでいたが、15,6歳の時に読んでいたら同じ感想を持っただろうか。おそらく共感の方が強かったのではないだろうかと感じた。確実に自分が大人になっている気がした。思春期の子たちの感情が理解できない、その年の子たちから嫌な大人だと思われるような大人に。そのことになんだか切なさのような感情を抱いた。この体験は今まで本を読んできた中で初めてのものだった。

 できれば自分も16歳くらいの時に一度読んでおきたかったなと思った。今となっては仕方がないことなのでもっと大人になったときにもう一度読んでみたい。大学生の今と感じ方が変わるのか楽しみだ。